一般社団法人 西宮市歯科医師会

口呼吸は万病のもと(1)
平田 幸雄
Q:口で呼吸することって良くないことなのでしょうか?

A:最近、若い人や子供が口をポカンと開けているのをよく見かけるのですが、そう感じませんか?見た目がだらしないというより、体に良くないのです。息をするために鼻がついているのです。口で息をする方が楽な気がしますが、大きな間違いですね。霊長類を含め哺乳類の中で口呼吸ができるのは人間だけなんですね。だから言葉を話せるようになって抜きん出て進化したのです。口は食事したり、しゃべったりするところで、息をする器官ではないのです。


Q:それでは鼻で呼吸すると、どんな点が良いのでしょうか?

A:今、息をしているこの空気にはさまざまなものが含まれています。塵、ごみ、花粉、においの成分、そして一番怖い病原菌です。でも鼻で呼吸していれば、鼻の中の毛や粘膜がフィルターの役目をしてくれます。おまけに冷たく乾いた空気でも、暖め湿度を与えてくれます。そしてのどの奥にある「ワルダイエル咽頭輪」(アデノイド、口蓋扁桃、舌扁桃、耳管扁桃、咽頭小扁桃)という5つもある免疫器官によって除菌されます。こうして汚れた空気をクリーンな状態にして肺に送っているのです。鼻は意味もなく顔の真ん中に付いているわけではないのです。次に口で呼吸するとどれだけ体に悪いか説明しましょう。このことは、元東京大学医学部の西原克成講師が指摘し注目を集めています。


Q:それでは口で呼吸することの弊害について教えて下さい。


A:口で呼吸すると色々な物を含んだ空気が直接入り、無防備なのどの免疫システムを侵します。こうして簡単に病原菌は白血球の中に入り全身に運ばれてしまいます。この状態が長く続くと血中の免疫細胞が減少し、ひいては体全体の免疫力低下を招き、思いもしない病気が発症したりします。これらは全身的な免疫過敏に関連していることが専門家の間では指摘されています。喘息、アトピー、花粉症、アレルギー性鼻炎などと密接な関係を持っています。
 今日は口呼吸で起こる口の中の病気についてお話したいと思います。まず口で息をすると口の中やのどがカラカラに渇きますね。すると歯に付いた食べ物の残りが頑固にくっついて非常に取れにくくなり、虫歯になったり、歯石ができたりします。また口の中には多くの常在菌がいますが、唾液による自浄作用、緩衝作用により細菌の活動が抑制され清潔な状態を保っています。しかし口呼吸により乾燥すると、環境ががらりと変わり悪玉菌が増えて暴れまくります。歯や歯ぐきを破壊したり、排泄物を撒き散らしたり、まるで産業廃棄物をきれいな池に垂れ流したようになります。これでは歯周病は急激に進行しますし、口臭もひどくなりますね。この口臭ですが最近若年者に多いようです。最近の若い人はおしゃれで、きれい好きですからとても気にしているようです。歯磨きで一時的に臭いはなくなりますが、口呼吸しているかぎりなくなりません。


Q:口臭の原因には口呼吸もありえるんですね?

A:はい、それから小、中、高校の学校検診でも気になることが起きています。
検診の前に児童、生徒に気になることのアンケートをとっているのですが、今までは圧倒的に「歯並びが気になる、口を開けると顎が痛い、口が開けにくい、開けると音がする」が多かったのですが、最近、小、中学生に「口臭が気になる」という人が増えました。友達などに言われるようです。口の中を見ても虫歯もないし、歯ぐきが腫れているわけでもないし原因らしきものが見当たらないのに臭いがするというのです。これも口呼吸が原因でしょうね。現在、半数以上の日本人が口呼吸していて、小学生においては8割が口呼吸していると言われています。


Q:何か原因があるのでしょうか?

A:最大の原因が離乳の早期化です。生まれたばかりの赤ちゃんは鼻でしか呼吸できません。ミルクを飲んでいる時は鼻で息をしているのですが、離乳食が始まる1歳くらいになると口で息をすることができます。その時放っておくと口呼吸が習慣性になり、空気中のいろんな物を直接吸い込んで未熟な免疫器官を迷わせて大人になるまで引きずってしまうわけです。欧米では口呼吸の弊害が早くから指摘されています。もうしっかり歩いているような結構大きな幼児がおしゃぶりを口にくわえている光景を外国のニュースや映画のシーンでよく目にすることがあります。これは3,4歳までおしゃぶりをくわえさせることによって、口を閉じる筋肉を鍛えて鼻で呼吸させるように習慣づけているのです。